1,600万円の制御リニューアルが730万円に。部品供給停止を前に、オーナーが確かめたこと
築26年のマンションで不調もなく動いていたエレベーターに、「使っている部品の供給がまもなく止まる」という理由で突然届いたリニューアルの提案。当初提示された見積もりは1,200万円でしたが、判断に迷っているうちに1,600万円へと膨れ上がっていきました。
希少機種ゆえ相見積もりも取れないなか、世田谷区でマンションを所有する本田様がi-tec24に相談して見えてきたのは、同じ工事内容でも見積もりの立て方によって金額が変わるという事実でした。高額なリニューアル提案を前に、その要否や金額に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
【プロフィール】
| お話をうかがった方 | アン・ドゥ ミール駒沢 オーナー 本田様 |
|---|---|
| 建物名 | アン・ドゥ ミール駒沢 |
| 所在エリア | 東京都世田谷区駒沢 |
| 築年数 | 築26年 |
| 建物規模 | 地上6階建て(エレベーターは5階まで) |
| エレベーター | 1基 |
好調だったエレベーターに、突然届いたリニューアルの提案
うちのマンションは2000年の竣工で、築26年になります。これまでエレベーターはずっと好調で、お願いしていた保守会社の点検対応にも、特に不満はありませんでした。
ところが2025年の暮れ、その会社から突然、エレベーターのリニューアルを勧められました。部品や制御盤などを新しくする、いわゆる更新の提案です。そんな工事が必要になるとは考えてもいなかったので、最初は驚きました。
詳しくうかがうと、理由は部品でした。うちのエレベーターに使われている部品はもう生産されておらず、数年のうちに調達できなくなる。だから、今のうちにリニューアルを考えた方がいい、とのことでした。
言われてみれば、たしかに動いているうちは何も困っていません。けれど、部品がなくなってから故障したらどうなるのか。そこは私にも想像がつきました。(※)
(※)エレベーターは、機種ごとに部品の生産・供給が終了する時期が定められています。供給が終了すると、部品交換による修理での対応ができなくなり、更新工事以外の選択肢が事実上なくなります。
「まだ早い」と思っているうちに、1,200万円の見積もりが1,600万円に。
それでも、正直なところ「まだ早いのではないか」という気持ちがありました。動きも良いので、もう少し使ってからでもいいのではないか、と。
ただ、調べたり話を聞いたりするうちに、考えが変わっていきました。エレベーターは30年ほどで更新の時期を迎えるといわれます。うちは築26年なので、あと数年でその時期に入る。しかも部品がなくなってしまえば、修理でしのぐという手が使えなくなる。つまり、待っている間に選べる手段が減っていくということです。(※1)
そう思って詳しい説明をお願いし、そこで示されたのが制御リニューアル(※2)の見積もりでした。最初に出てきた金額は1,200万円。2000年に650万円で設置したものを、改修するのになぜ倍以上なのか。どうにも腑に落ちず、一度持ち帰ってもらいました。
ところが3ヶ月ほどあとの2026年春、次に示された金額は1,600万円。資材の値上がりが理由だと聞きましたが、高いからと一度持ち帰ってもらったあとに値段が上がってきたことに、正直、戸惑いました。やるなら前倒しで、という気持ちは固まっていました。だからこそ、この金額が妥当なのかだけは、どうしても確かめたかったのです。
そこで相見積もりを取ろうとしたのですが、ここで壁にぶつかります。うちのエレベーターは、当時としては珍しい機械室のない4人乗り。5社に問い合わせましたが、どこも「実績がないので見積もりを出せない」とのことでした。
比べたくても、比べられない。困り果てて、建物を任せている不動産会社に相談したところ、知り合いの会社を紹介してくれました。それが、i-tec24でした。
(※1)エレベーターの更新時期は一般に設置後25〜30年が目安とされます。ただし実際の判断は、機種、使用頻度、部品の供給状況、これまでの整備履歴によって異なります。
(※2)制御リニューアルとは、エレベーターの制御盤や巻上機など、動作を制御する機器を中心に更新する工事のこと。かごや昇降路、レールなど既存設備を流用できるため、すべてを入れ替える全面リニューアルに比べて工期・費用を抑えられる場合があります。
同じ工事内容で730万円。差は「見積もりの考え方」だった
紹介を受けて、私はこれまでの経緯を話しました。1,200万円だった見積もりが1,600万円に上がったこと。相見積もりを取ろうにも断られてしまったこと。
そのうえで、保守会社から受け取っていた見積書のコピーをそのまま渡し、「この内容で、いくらでできますか」とお願いしました。ただ知りたかったのは、安くできるかどうかだけではありません。見積書に書かれている工事が本当にすべて必要なのか、そこも確かめたかったのです。
返ってきた提案は、工事の中身としてはそれまでと同じ制御リニューアルでした。違ったのは、金額です。安くなっても1,000万円は超えるだろうと覚悟していたのに、出てきた数字は730万円(税別)(※)。にわかには信じられず、「本当にこの金額でできるんですか」と聞き返しました。
これについては、製造から保守・改修までを一式で担う会社と、メンテナンスを専門にする会社では、見積もりの考え方が違うという説明でした。
製造から保守・改修までを一式で担う会社は、その体制を前提としたパッケージの価格になる。一方、メンテナンスを専門にする会社は製造コストを背負わず、物件ごとに必要な機器を積算し、そこに工事費と適正な利益を乗せて出す。工事で大きく稼ぐより、長い保守のお付き合いを大事にしている、と。腹に落ちた私は、その場で決めました。
(※)金額は本田様の物件における実例です。実際のエレベーターのリニューアル費用は、機種・階数・工事範囲・部材の調達状況によって大きく変わります。
契約から3ヶ月で着工、工事は7日間で完了
契約を決めたあと、次に気になったのは、いつ工事ができるのかということでした。いまはどこも部材の調達に時間がかかると聞いていたので、着工までは相当待たされるものと思っていました。ところが、ちょうど施工の枠が空いたタイミングに入れたおかげで、契約から3ヶ月ほどで着工できました(※)。
工事は2026年7月16日から22日までの7日間です。2週間はかかると思っていたので、1週間の工程表が出てきたときは、正直、目を疑いました。猛暑の最中でしたが、事前の告知と住民の協力があり、生活上の大きなトラブルはありませんでした。動き出したエレベーターは、前より速くなったように感じます。
(※)部材の納期は時期・機種・調達ルートによって異なり、近年は長期化する傾向があります。本件は部材の調達と施工枠の条件が重なったケースで、着工までの期間や工期は物件条件によって異なります。
価格の次に大事だったのは「すぐ来てもらえること」
今回あらためて感じたのが、何かあったときにすぐ来てもらえる近さの大切さです。忘れられないのは東日本大震災のこと。うちの建物はすぐ連絡できたので当日中に復旧しましたが、連絡が遅くなった親戚のビルは、1週間止まったままでした。足の悪い70代の方が、その間、一度も下に降りられなかったそうです。
エレベーターは、止まれば暮らしが止まります。それも、いちばん困るのは、いちばん足の弱い方です。だから私にとって大事なのは、価格の次に、どれだけ早く来てもらえるかなのです。今回のリニューアルを通じて、その安心感も含めて任せられると思えたので、保守契約もi-tec24へ切り替えました。
見積もりを断られても、諦めずに探してほしい
今回のことを振り返って、同じ立場のオーナーさんに伝えたいことが、ふたつあります。ひとつは、見積もりを断られても、そこで諦めないでほしいということ。
私は5社に「実績がないので見積もりを出せない」と言われました。相見積もりを取りたくても取れず、あのときは本当に行き詰まったような気持ちでした。
それでも、そこで諦めて言われたままに1,600万円で契約していたら、今回のような選択肢にはたどり着けなかったと思います。断られたのは、たまたま相手の得意分野ではなかっただけでした。メンテナンスを専門にしている会社や、同じ機種を手がけている会社なら、見てくれることがあります。面倒でも、もう一社、もう二社と声をかけてみてください。
もうひとつは、動くならなるべく体力があるうちがよいということです。リニューアル工事の間はエレベーターが止まり、階段で生活する期間が出てきます。今回の7日間だけでも、私にはこたえました。これが10年、20年先だったらと思うと、ぞっとします。
【担当者からのコメント】
エレベーターの部品には、生産や供給が終わる時期があります。これは特定の機種だけの話ではなく、長く使われている機械にはいずれ訪れることです。供給が終わったあとに不具合が起きると、修理で直すという手段が取れず、更新するしかなくなります。本田様が迷われた「まだ動いているのに今なのか」という問いに対して、私たちが事実としてお伝えしているのはこの点です。早めに動くほど、選べる手段も、工事の時期も、ご自身で決められます。
もうひとつ、見積もりについて。私たちの見積もりは、その物件に必要な機器を自分たちで積算し、そこに工事費と適正な利益を乗せているシンプルな構造です。だから金額の根拠は、いつでもご説明できます。本田様は受け取った見積書をそのまま持ってきて、「この工事は本当にすべて必要なのか」と尋ねられました。そうやって聞いていただければ、私たちも一つひとつ根拠をお示しできますし、工事の範囲も具体的になります。
ですから、必ずしも「今すぐやりましょう」とお伝えするわけではありません。機種や状態によっては「もう少し様子を見ても大丈夫です」とお伝えすることもありますし、「部品や資材の状況を考えると、むしろ早めに動いた方がよいです」とお伝えすることもあります。急かすためではなく、判断のタイミングを一緒に選ぶために、必要な事実をお伝えしています。
エレベーターのリニューアルは、30年に一度あるかないかの大きな工事で、オーナー様にとっては予想外のところから突然出てくる大きな出費でもあります。だからこそ、建物全体の修繕計画のなかにエレベーターも位置づけ、日ごろからエレベーター会社と話しておくことが大切だと考えています。
(i-tec24 専務取締役 吉村捷平)