エレベーターの保守管理の業者を分類する際に、一般的に「メーカー系」と「独立系」という分類の仕方があります。
それぞれを定義すると、
メーカー系:エレベーター製造メーカーの系列子会社及びその下請け会社
独立系:メーカーの系列ではない保守管理会社
となります。
メーカー系の子会社及びその下請けの会社は当該メーカーのエレベーターしか取り扱わないのに対して、独立系の保守会社は複数のメーカーの保守点検を行なうのが基本です(メーカー系の下請けでも他のメーカーの点検を行なう業者が地域によって一部います)。
独立系はおよそ60年頃前くらいから存在していて、当時は製造メーカーの下請けの業者として仕事をしていた技術者が独立をして、ビルオーナーから管理の仕事を任されて発展をしていくのが独立系の走りでした。
弊社も創業当初はいくつかのメーカーから仕事をいただいていました。
当時は電気と機械の知識をもってメンテナンスや故障対応にあたっており、いまよりもさらに技術者としての熟練度や感覚が必要な時代だったといいます。
月に2度、2名体制で点検する保守契約もざらで、金額も今とは比べものにならないほど高額な水準での契約でした。
時代を経るに従って、新しい機種のエレベーターが開発され、点検にかかる手間や効率化が為されたことで、点検回数も毎月1回、さらには最新の機種にはリモートでの点検や監視が付くことで現地点検は年4回(3ヶ月に1回)という水準まで頻度が下がってきました。
この背景には省力化だけでなく、物件の増加に対して技術者の育成が間に合わず、人員が不足しているという状況も存在しています。
独立系の業者が増えるに従って、メーカー系は自社の物件が解約になることを避けるために、いわゆる「部品の売り渋り」やオーナー・独立系に対する嫌がらせなどを行なうという実態が生じてきました。
メーカー系自体は他メーカーの保守管理契約を取ることはしないので、業界として暗黙の独占・寡占が脅かされる状況となるため、当然の反応とも言えました。
しかし、関西で端を発したメーカー系(被告)対独立系(原告:ビルオーナー)の訴訟の結果、メーカー系の行為は独占禁止法違反と見なされ、以後、独立系業者(とオーナー)に対しても部品供給の義務、情報公開の義務が課されるようになりました。
今では多くのメーカーが部品販売専門の窓口を置き、資料をホームページで公開するようにしていますが、その動きには差があり、より改善の余地があるように感じます。
とはいえ、他業界(法定的な縛りのない業界は特に)やそれ以前の状況と較べると格段に対応は良くなったと言えると思います。
それから10数年余りなりますが、現在では業界にまた違う動きが出てきています。
日本の建築物建設に伴うエレベーター設置台数の増加は緩やかになり、技術を誇る日本のメーカーは成長著しい海外にその市場を求めるようになりました。
日本の国内市場は旧来より変わらず、新築時に赤字で納品し保守管理費用で採算を取り戻すビジネスモデルですが、独立系の拡大が足元で盛んになっていることから、M&Aや業務提携により独立系を取り込んだり、上手に活用する動きが各メーカーに出てきています。
この業界が消費者や市場に対してフレンドリーではないことは旧態依然としてはいるものの、情報社会となったいま、ようやくその潮目が変わりつつあるのかな、と感じます。
ビジネスモデルの根っこである赤字での納品についても、エレベーターの据付工の不足により深刻な納期遅延が生じていることから、ゼネコン・設計者に対してのエレベーターメーカーの地位が上がっている(良いこととは言えませんが)ことも相まって、金額の上昇に繋がっています。赤字での納品という異常事態から脱することは、アフターサービスの自由競争に向けた第一歩目とも言えると思います。
これらの変化により、保守会社も顧客に選ばれるサービスを志向する必要が生じてきており、より自分たちのサービスの追求、付加価値の追求を行なっていくことが求められています。
こうした背景から、顧客・市場に対しての情報発信は重要な活動となってきており、エレベーター保守管理という長いお取引となる性質から考えても、情報発信によりお客様の正しい理解と信頼関係の構築はこの業界に関わる者の義務でもあると思います。
乱筆乱文ではありますが、そういったことを考えながら、次回も記事を書いていきたいと思います。
どうぞ宜しくお願いいたします。